国民医療費が日ごとに増えており、どうしたら良いかで議論がなされています。
高齢者が多くなるので、医療費が増えるのはやむおえないとの意見も聞かれます。
検査が必要以上に多いのではないかとの意見もあります。
薬の出し過ぎとの意見は、もっとも良く聞かれる意見です。薬を必要以上に処方しないようにチェック機能を持たそうとのことで、「医薬分業」という方法が国の方針で推進されてきました。内服薬で七種類以上薬を処方すると、その費用の一割が減額されるという制度もできました。このことにより、確かに薬の処方量は減ってきていると思います。以前は、風邪の処方で、抗生物質・解熱剤(経口および坐薬)・咳止め・胃薬(しかも一種類ではなく、数種類)・整腸剤・うがい薬・トローチ・湿布・ビタミン剤が処方されるということもありました。あまりの薬の多さに、処方箋を見ただけではどこが悪いのか想像が出来ないということもありました。こんな処方は最近少なくなりました。
ところが、まだ問題があるように思うのです。
つい先日のこと、リュウマチの患者さんの処方箋を調剤する機会がありました。今までの抗リュウマチ剤の効き目が悪くなってきたので、別の種類の抗リュウマチ剤が処方されていました。「今回から薬が変わっていますね。」とお話すると、「今までの薬がたくさん残っている。」とのこと。今まで薬がある上に薬をもらっておられたのです。まったく服用しておられなかったわけではなく、長年の間に服薬を忘れたりしたものがつもり積もって、数ヶ月分のお薬が余るということがおこっていたようです。この薬は、もう使われることはなくごみとして焼却されることになるでしょう。
また、こんなこともありました。4日後に心臓の検査をする予定で、従来の薬が30日処方されました。4日後検査の結果、別の種類の薬が2週間分処方され、今までの薬は使えないことになりました。従来の薬26日分が、ごみ箱行きです。
さらにこんなこともありました。ほんの数十分前に調剤して患者さんに渡したばかりの薬が、近所の溝に捨てられてありました。きっとこの患者さんにとっては、必要のない薬だったのでしょう。一言そのことを、薬局で言ってくれれば良かったのにと思いました。
大阪池田市の小学校における殺人事件で、取り押さえられた犯人は最初、精神安定剤を10倍量服用したと言っていたようですが、10倍量服用できるほどのたくさんの薬が患者さんの手元にあることがそれほど不思議ではない状況が、今現実におこっているのです。
健康保険で処方される薬の薬代は、全て国民医療費でまかなわれています。どうせタダだからとか、薬が残っていることをお医者さんに言いにくいとか、またはその他の理由で、服用する当てもない薬を処方してもらうことは、医療費の無駄遣いではないでしょうか?
私たち薬局において仕事をする人間も、みすみすごみ箱へいくとわかっている薬を時間と神経を使って調剤することは、とてもむなしいと感じます。
国民一人一人がちょっとした気遣いをすることによって、懸案の「国民医療費の無駄遣い」を減らすことが出来るのではないでしょうか?