あなたの町の薬の歴史(「売薬と総社市」) (1/14)

売薬と総社市

自分の住んでいる町、友達の住んでいる町、親戚の住んでいる町、意外なところに意外な薬の歴史があったりするのです。 …ご存知ですか?

売薬の起源

 売薬とは、包装された既製の方剤で、特殊の名称をつけて一般に販売され、国民が医師の指示によらないで医薬の目的に用いるものである。

 この売薬のような既製剤が、いつ頃から行われたかについては明らかでない。

 昔は医者のいない時代は勿論、医師という職業人ができても、国民の治療にいちいち医師の指示を待つようなことは、時間的にも経済的にも不可能なことであって、2、3の薬味を混合した既製の経験方剤が古代から存在したことは想像できる。

 売薬は昔、医師、神官、僧侶のような社会的地位のあるものが創製し、家伝秘方神仙の託宣などと称して、世人の信用を得ようとつとめた。したがって、多くは寺院等から発売されていた。

様 々 な 秘 薬

池田藩 牛黄丸  唐土より伝来したと伝えられる
    混丸子  同上
    肝凉円  同上
    奇応丸  同上
    普救丹  同上
    玄氷円  同上

岡山市弓之町  
河本 亀代  腹病丸   因州鳥取より岡山に転居。一子相伝の妙薬

岡山市西大寺町北側 
岩田 喜三郎 延齢丸 空海和尚の宣伝にかかわる齢薬   俗に「たんせきの妙薬ばばあ丸」として知られる

岡山市瀬尾  
石原 堯成 竜王散  徳川中興の期に大流行した霍乱で驚くべき効果を上げる

岡山市豊成  
野上 長勳 ヒョウソ薬  ヒョウソに最も有効とされる (指先の膿み腫れる病気)

岡山市野田屋町32 広瀬 一郎 速治湯

岡山市福島上町
佐藤 丈作 肛門丸  不詳

津山市
片山 よしの 黒竜湯  神経痛、打ち身薬

津山市福渡町14
前原 以登 安産湯  不詳。明治35年官許

津山市船頭町
元祖 三谷屋市与三左ェ門 五気順布湯  不詳。補血剤といわれる。

勝田郡豊田村宮内
広友 しまよ 宮内金瘡  打ち身、切傷薬

和気郡香登町
行吉 小太郎  神奇丸

和気郡
恒次氏 八竜薬王湯  不詳。産前産後の血の道の薬

和気郡
佐藤氏 安産湯  不詳。産前産後の血の道の薬

邑久郡福田村 (岡山市小畑61)
松原 東一郎 豆田小児丸  一般栄養障害に対し用いる。効能顕著

都窪郡
林氏 黒精円  不詳。小児五疳の薬

都窪郡妹尾町
高木恒生堂 指薬  不詳

都窪郡庄村上東
吉田花阪堂 竜昌丸  不詳

阿哲郡本局区花木
川井 富五郎 烏金散  「血の道」の特効薬。 薬草を主成分とし、更に数種の生薬を配剤

児島郡郷内村植松
田辺 喜一 疥癬薬  「渡し守」をしていた田辺氏の祖先が、命を助けた男に伝授される。他「つき目薬」「咽喉瞳の薬」も伝授。

児島郡福田村
大塚 鶴五郎 快晴湯  不詳。肺・肋膜の薬という

久米郡
橋本氏 禹功湯  打ち身・切傷・筋骨の痛み止めの薬

吉備郡秦村
松野 和 金仙薬  神農秘伝書による妙薬といわれる

吉備郡真備町
真神氏 黄胖奇薬  不詳。「心臓の薬」「十二指腸の薬」という

吉備郡高松町199
関野 憲三 妙治湯  旧備中高松城主清水氏が原因不明の全身腫張の難病にかかっていたが、これを用いたところ、効果顕著で平癒したという

久代村船山
井上氏 井上目薬  不詳

清音村
安信氏 胎毒下し

総社市井尻野
三楽堂 角田 栄 チョウヨウ薬 豊 心丹   旧浅尾藩蒔田家に伝わる秘法薬。

***細谷孫一氏著 「売薬と総社市」(再増訂版) 岡山県総社市 より転載いたしました。***